Santa Maria

Santa Maria  作詞・作曲:satsumaimo

 おそろいのマフラーで街に出かければ
 けばけばしいイルミネーション
 浮かれてはしゃぐバカップルとは
 わたしたちは違うよね

 真っ赤なドレスに身をつつんで
 きれいなハイヒールはいて
 あなたと二人きり
 とっておきのパーティー
 
*(ジングルベル) サンタさんはソリに乗って
 (ジングルベル) ムチを打ち鳴らす
 すてきなホワイトクリスマス
 今夜はわたしだけの
 トナカイになってね*

 クリスマスケーキのロウソクは
 吹き消すだけじゃもったいない
 あなたのためだけに
 とっておきのパーティー
 
 *くりかえし*

現代音楽

 マンションの一室で家族はテレビを観ていた。テレビでは現代音楽のコンクールでの入賞作品を演奏しており、フルートのフラッター・タンギングとヴァイオリンのフラジョレットとトロンボーンのベル・トーンとボールペンの高速カチカチ音が同時に奏されるような難解な音楽に他ならなかった。いっぽう家族のほうはというと父親はノンアルコールビールの三本目の缶を開けようとしており母親は息子と娘におでんをよそってやっていた。父親がビールをゴクゴク喉を鳴らして飲みはじめるとテレビの音楽はフルートとヴァイオリンで半音ちがいのトリルを奏しトロンボーン奏者が二オクターヴにわたるグリッサンドをしながらボールペンを高速でカチカチさせていた。娘が口につけたおでんの大根が熱くてハヒフホッヘヒッという感じの声をもらすと音楽もそんな感じになった。息子が笑いだして手に持った箸を床に落としてしまい母親は息子を叱りつけた。音楽はうねりを増しながら音量を上げていって息子はまた笑うと今度は頭をごつんとやられてしまってシュンとしていた。見ていた父親が母親に抗議した。そんなに叱ることないだろう、ハシを落としたくらいで――何よ、と母親が言い返した、あんたはいつも家にいないで夜遊びして酒のんでばっかりで朝帰りだからそんなことが言えるのよ、自分では子どもになんにもしないくせに偉そうなこと言わないでよね。何だと、父親が語調を荒げて音楽はボールペンのソロによるカデンツァになっていて誰のおかげでこのおでんが食えると思ってるんだこれはおれのかせいだ金だぞ金をかせぐのがおれの仕事だ、あんたそんな事言ったってお給料減らされてるじゃない、減ってない、じゃあ何よ酒ばっか飲んでお金使い込んでるの。あたしの気苦労も知らないであんたはいいわよねえ、それはコッチのせりふだと言って父親が机を叩くと音楽はヴァイオリンのバルトーク・ピッツィカートの連続と演奏者全員の足踏み音でありボールペンが床に叩きつけられると娘のおでんの器がひっくり返ってその汁をあびた娘が熱いよ熱いよと泣き出してあんたひどおい最低よサヤ泣き出しちゃったじゃないおれは悪くないおまえだって息子の頭殴っといて自分のことは棚にそれは躾よあんたのは勝手に怒ってるんじゃない一緒にしないでよ一緒に住むのもいやだわ出てってああいいとも出てってやるよ金がなくなろうが家のローンが払えなかろうがおれは知ったこっちゃないぜとトロンボーン奏者はマウスピースを取り外して床に投げつけてさらに強く足踏みをつづけてヴァイオリンが弓でとなりのフルート奏者の頭をビシリバシリと叩くと対抗してフルート奏者は右手にピッコロを左手にフルートを持ってヴァイオリン奏者を思いきり突きまくると後ろによろめいたヴァイオリン奏者は転がっていたボールペンを踏んづけてひっくり返った先にいたトロンボーン奏者が衝撃でトロンボーンを取り落としてドンガラガッシャン食器の破片が息子の額に突き刺さって娘と息子の泣き声が合唱をはじめて演奏者も歌いはじめたが父親は足音をドスドスいわせて玄関のドアを開けるとちょうどそこには隣に住んでいる受験生が怒りに肩をふるわせて立っており父親がたじろぐと受験生はこっちは受験勉強大詰めで今年受からなかったら三浪で田舎に戻って酒屋を継がなきゃならなくなるんだ静かにしないとこの間つくった爆弾を投げ込むぞわかったかおい。父親は受験生をぶんなぐって玄関で乱闘が始まると舞台にぞくぞくと打楽器奏者が打楽器をかかえて入ってきて歌はまだ続いていてそこにティンパニの伴奏をはじめ木琴ウッドブロックカウベル和太鼓チャイムシンバルとボールペンは三色ボールペンになっていて父親は鼻血を出しながらリビングに戻って電話をとって警察を呼んでいて母親は来ないで二度とその顔を見せないでと父親におでんを投げつけていると受験生が入ってきて警察は呼ぶなうちの爆弾がバレたらどうすんだふざけんなと言いながら父親に近づくとおでんが受験生に当たって受験生は怒り狂って母親を蹴り飛ばして子どもたちは泣きながら止めに入ったが息子は股間を蹴り上げられ娘は右腕をひっぱられて脱臼して痛いよ痛いよと言いながらひきずられ連れて行かれたが母親は気を失っていて父親は警察を電話口で怒鳴りつけていてカウベルと和太鼓にホイッスルとギロが加わってラテン音楽風のリズムを刻むと父親は踊り出して息子も股間をおさえながら踊り出して玄関がバタンと閉まって母親が眼を覚まして娘がいないことに気づくと母親も踊りだした。
 フルートがエスニックな旋律を吹き音楽が盛り上がって舞台にはアフリカの原住民が連れてこられて嫌そうにしながら自分たちの民族の踊りを音楽にあわせてしぶしぶ踊りはじめて父と母と息子も我を忘れて踊っていておでんは冷めていたが隣の部屋からドンドンと壁を叩く音がしてティンパニがトレモロを始めて受験生が娘を返してほしかったら今すぐ警察を呼ぶのをやめて九百万円持っておれの部屋に来い、三十分以内だ、それ以降は娘がどうなっても知らん、おれはこの九百万円でもっと爆弾をつくるんだ、それから山手線各駅に爆弾を仕掛けてあとT大学にも爆弾を仕掛けてみんな爆発しろ爆発してしまっておれが大統領になればもうこんなことはなくなるんだそしてドラが鳴り響いてカノン砲が放たれて演奏者と原住民と父と母と息子は耳を塞ぎながら踊っていて娘は受験生の勉強机の椅子にしばりつけられていて踊れなかったがその代わりに受験生も踊りだした。そのままテンポが速まってボールペンのカチカチ音も速まってBPM220に達したところで演奏者と父と母と息子と受験生が口から泡を吹いて倒れてチャイムでAの音が鳴って音楽がやんだ。
 一人の原住民の男が娘の戒めを解いて椅子から解放した。