本能

隠喩としての病い・エイズとその隠喩隠喩としての病い・エイズとその隠喩
(2006/05)
スーザン ソンタグ

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 結核とか癌とか、そういう死に至る病気は、とくに治療不可能なうちは、なんだか恐ろしい正体不明の異質なものとして、単なる病気以上の意味をもたされる。つまり、隠喩としての意味をもつ。病気の本質から離れていろいろなイメージが一人歩きする。
 結核患者は頬に赤みが差す。結核は「情熱」という隠喩と結びつけられる。昔の小説ではそういうキャラがよく出てくるという。
 癌の場合は「あいつは○○の癌だ」とか言われる。内部に巣食う害悪としての隠喩をもたされる。
 エイズなんかはホモへの天罰みたいな隠喩をもつようになる。アフリカから発生したもんだから第三世界から先進国への天罰みたいな意味にもなる。黒人差別とかにもなる。
 そういうところにメスを入れた斬新な評論です。
 ソンタグ女史の名著ということらしいのになぜ図書館にないのだ、と思ったら、「生物」の棚にありました。


精子戦争---性行動の謎を解く (河出文庫)精子戦争---性行動の謎を解く (河出文庫)
(2009/12/04)
ロビン・ベイカー

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 これは衝撃だった。
 性行動をぜんぶ生物学で説明しちゃいます。不倫も乱交も同性愛も自慰も生物学的戦略です。こんな本が面白くないわけがない。
 また、自分の遺伝子を残すために有効な戦略は、男と女でわりと違ってきて、それゆえに性行動も違ってくる。漠然とは分かっていても、ここまで具体的に解説できるというのはすごい。ウロコが落ちます。フェミニズムもこういう方向から攻める手もあるのでしょう。
 行動生物学を人間に持ち込みすぎるのはよくない、という話もだれかに聞きましたが、理論がどこまで正しいかとかはともかく、説として画期的にもほどがありました。
 おすすめです。潔癖なひとには多少刺激が強いかも。


母性という神話 (ちくま学芸文庫)母性という神話 (ちくま学芸文庫)
(1998/02)
エリザベート バダンテール

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 フェミニズム界では超有名な本らしいです。
 母性愛は本能なんかじゃない、父権社会によって「本能」に祭り上げられたのだ、ということを歴史上の女性の行動を例示してひたすら証明する本です。著者がフランスの人だからフランスの例ばっかりですが、たとえばサロンで不倫しまくってたブルジョワ女性たちは子供を貧乏な乳母に預けて育てさせて、何年も顔も見ようともしない。お金には困ってないはずなのに。この女性たちにとってはサロンで自分が交流するほうが子育てより大事だった。子育ては貧乏人のやることで軽蔑されていた。
 女性が子育てするのをスバラシイというようになったのはその後になってからだ。ルソーが『エミール』を書いて子どもの大事さを主張したりした頃からだ。そうすると今度は、だんだんと、自分の母乳で子供を育て、手塩にかけて見守るのが流行、トレンドになったのだ。
 さらに20世紀に入ると、精神分析の理論なんかも、子供にとって母親が絶対的に重要ということの理論の支柱になった。母親の人格に問題があると子供の自我形成がやばいのだ。父親は脇役でしかない。
 そして今に至る、「母性本能」の神話が形作られた、ということ。そして、子供に愛情を注がない母親は、異常とされる。
 この本、出版されたときには大論争を巻き起こしたらしいですが、僕個人としては、いまさら「母性愛は本能なんかじゃないぜ」と言われても、そんなに抵抗感がありません。どうだろうか。
 それよりも、この本を図書館から借りてきたのが、他でもない僕の母ちゃんなのだ。それが気になる。


図書館ねこ デューイ  ―町を幸せにしたトラねこの物語図書館ねこ デューイ ―町を幸せにしたトラねこの物語
(2008/10/10)
ヴィッキー・マイロン

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 返却ボックスに捨てられてた子猫。美談ですな。
 デューイの愛嬌にも心うたれますが、作者(図書館長)が苦労人すぎる。二十代で子宮摘出、夫がアル中で離婚、乳癌で乳房切除。家族も自殺したりする。それでもめげない強い心の持ち主。その心の励みになったデューイ。そんな話。
 図書館と猫ってなんだかイメージ的に相性がいいよね。