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独文独歩 23

 シラー
 『ヴァレンシュタイン』

 Friedrich von Schiller, 1759-1805
 Wallenstein, 1799

 三重の「父への反逆」

 フリートラント公ヴァレンシュタインは、皇帝に仕える身でありながら、敵方のスウェーデン・ザクセンと秘密裡に組み、仲裁者となって三十年戦争を自らの手で終結させようとした。それは壮大な事業、英雄的な行為であるが、同時に皇帝への大逆罪であり、ボヘミアに自分の軍人国家を作ろうという野望、不遜な名誉欲もひそんでいた。そして、自分には神の加護がついているという思い上がりが、彼の破滅を招く。
 臣下である中将オクターヴィオ・ピコローミニは宮廷からヴァレンシュタイン逮捕の密命を授かり、かわりに全軍の指揮権は自分に委ねられたことを知る。彼は慎重に周りの将軍たちを一人ずつ皇帝側へと引き込み、みごと寝返りを失敗に終わらせ、念願の公爵位を手に入れるが、殺されなくても済んだはずのヴァレンシュタインを部下ブトラーの早計で失い、かつ息子も戦死したうえでの恩典に内心は複雑である。
 オクターヴィオのひとり息子マクスは、ヴァレンシュタインなら平和を創りだせると信じて心酔し、その娘テークラと恋仲になる。父が公の行動を邪推するのに憤慨し(父と決別する第二幕のラストは感動的だ)、しかし公が本当に皇帝から離反すると知って一体何が正義か分からなくなり、大人の世界は猜疑心と嘘まみれで汚い、自分の愛だけが清いのだといって、スウェーデン軍に猛攻し非業の戦死を遂げる。
 ヴァレンシュタインが皇帝に、オクターヴィオがヴァレンシュタインに、マクスがオクターヴィオに、つまりそれぞれが忠誠を誓っていたはずの「父」のような存在に、いずれも不本意に逆らうことになってしまうのである。勇敢に決断する公、地道に策を進めるオクターヴィオ、純粋さに殉じるがむしゃらなマクス。その中で生き残って昇進するのは、オクターヴィオだけであった。

 運命に裏切られる

 この劇は、自分の運命はツイてる、と思って自信にのぼせた人が、王冠に手をのばして破滅する話である。ヴァレンシュタインは、自分には神の恩寵がついている、私は選ばれた人間であり、普通の人間の尺度では測れないのであり、ゆえにどんな危険の中でも失敗しないと信じていて、家臣の警告も聞かない。長い戦に平和をもたらそうという純な行動を、ヨコシマな動機に仕立て上げるのは、伝統にしがみつく平凡な人々なのだ。スウェーデン対ドイツ、カトリック対ルター派、そのような党派の対立を仲裁する者たらんと欲する彼はしかし、逆にどちら側からも孤立する。占星術への傾倒は彼の弱さであり、本当は自信がないことの表れ、かつてレーゲンスブルクで皇帝に一たび罷免されて以来芽生えてきた猜疑心の表れである。人を信頼せず、人に信頼されないとき、いかなる孤高の英雄たりとも八方ふさがりになるだろう。
 恩寵が万事都合よく取り計らってくれると信じ、自分の出世コースをより高い運命の導きであるかのように思いなして無茶な行動をすると、いずれその運命に裏切られる――自分の運命を読み取って正しく決断するなどというのは、さかしらの人間には所詮手に余ることなのかもしれない。

 Denn eifersüchtig sind des Schicksals Mächte.
 Voreilig Jauchzen greift in ihre Rechte.
 Den Samen legen wir in ihre Hände,
 Ob Glück, ob Unglück aufgeht, lehrt das Ende.
 
 嫉妬深いのだ、運命の神々は。
 早まった喜びはかれらの領分を侵す。
 我々はかれらの手の内に種まくだけ、
 幸運か、不運と出るかは、最後に分かる。
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