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独文独歩 46

 ムージル
 『特性のない男』

 Robert Musil, 1880-1942
 Der Mann ohne Eigenschaften, 1930-43

 抜き書きとメモ

 ウィーンの交通事故。救急車がくると立ち去る野次馬。
 「人々は、法律と秩序の枠内で事件が起きたという筋の通った印象を抱いて、立ち去っていった。」

 「青年時代には、自分で輝こうとする衝動の方が、光の中でものを見ようとする衝動よりもはるかに強かった。」
 So viel stärker war in der Jugend der Trieb, selbst zu leuchten, als der, im Lichte zu sehen;
 知性派ウルリヒと情熱派ヴァルターの青年時代の交友。今では三角関係の敵同士。
 ウルリヒを「特性のない男」と名付けるのはヴァルター。「こうした特性が、彼という人間をつくりあげたんだ。だからこれらの特性は、彼のものではないわけだ」

 「一ミリメートルの中にどれほど多くのものが隠されているのか、まるでわかっていない奴なら、一キロメートル単位でものを考えることだって楽にできるものさ!」
 Es muß leicht sein, [...] in Kilometern zu denken, wenn man gar nicht weiß, welche Fülle jeder Millimeter verbergen kann!

 「もし愚鈍というものが、内面的には才能と見間違えるほど似ているのでなかったなら、そして外面的には進歩、天才、希望、改良として現れうることがなかったなら、だれも愚鈍でありたいなどとは思わないだろうし、したがって愚鈍など存在しなかっただろう。」
 [...] wenn die Dummheit nicht von innen dem Talent zum Verwechseln ähnlich sehen würde, wenn sie außen nicht als Fortschritt, Genie, Hoffnung, Verbesserung erscheinen könnte, würde wohl niemand dumm sein wollen, und es würde keine Dummheit geben.
 
 「人間がその全人格を金のために捧げずに、その肉体だけを捧げる場合、これを売春と呼ぶ傾向がある」
 man will es Prostitution nennen, wenn ein Mensch nicht, wie es üblich ist, seine ganze Person für Geld hergibt, sondern nur seinen Körper.

 オーストリア愛国運動「平行運動」Parallelaktionはプロシアの向こうを張っているが、その指導はあえてプロシア人事業家アルンハイムに任せるべき、という理念

 予期せざる着想のためには、それを予期して待ち望むより他ない。それはステッキをくわえた犬が狭いドアを通り抜けるようなもので、頭がよかろうとやはり成功は不意の偶然のなす業である。これを人は「霊感」などというが、ステッキとドアとの、物同士の親和性にすぎず、たんなる非個人的なものである。

 娼婦殺しの大工、モースブルッガーへの興味。俗っぽい怪奇趣味?
 「身の毛のよだつものや許されざるものを、夢やノイローゼといった許せる形で賛美することは、市民的時代の人間によく合っていると彼には思われた。」
 Das schaurige oder Unerlaubte in der zugelassenen Gestalt von Träumen und Neurosen zu bewundern, schien ihm recht zu den Menschen der Bürgerzeit zu passen.

 ウルリヒ、かつての少佐夫人との恋。自ら身を引いて島で過ごす。
「純粋な恋の病は、所有への欲望ではなく、この世を覆うヴェールが優しくはがされる状態のことであり、このためなら恋人の所有を進んで断念したくなるほどのものである。」

 成年になると、「われこそは人生である」と主張する何かが突然登場する。まるで二十年文通していた人が、想像と全然違う姿で現れたように。

 酵素や触媒は、原料としては関与せずに、現象を引き起こす。それと同じように、「真の」信仰というものはないが、この名において行われた戦争が、世界を作り変えて実り豊かにしている。

 自分が世の中で身を立て、獲得した特性は、じつは自分のものではなく、相互関係の結果である。体験は人間から独立して、諸事物の間に解消する。
 「ひとつの『男のない特性』の世界が出現した――それを体験する者が存在しないような諸体験の世界が。」
 Es ist eine Welt von Eigenschaften ohne Mann entstanden, von Erlebnissen ohne den, der sie erlebt [...].

 「ウルリヒは、国家というものを、鄭重にサービスしてもらう権利のあるホテルくらいにしか考えていなかった」

 「否定されるもの、つまり、水、空気、空間、金銭、時の流れのように、色のない、臭いのない、味気のない、重さのない、道徳のないようなものが、どれも実際は最も大切なものだという点に、人生のある種の幽霊じみた特徴があるように思われる。」
 scheinbar liegt darin, daß alles Geleugnete, alles Farb-, Geruch-, Geschmack-, Gewicht- und Sittenlose wie Wasser, Luft, Raum, Geld und Dahingehen der Zeit in Wahrheit das Wichtigste ist, eine gewisse Geisterhaftigkeit des Lebens;
 →列挙が一対一対応していると思われる。すなわち、色のない水、臭いのない空気、無「趣」味な空間(近代都市の)、重さのない金銭(紙幣・利子利息・仮想通貨)、時の流れとともに変わる道徳。

 「あたりの空気には、文章の最後の適切な箇所に打たれたピリオドの沈黙が漂っていた。」

 ウルリヒ、逮捕され訊問される。ラインスドルフ伯爵の名前を出すと態度が一転し、警視総監じきじきに機嫌よく釈放を申し渡され、翌日から大愛国運動の名誉秘書となる。
 「彼を非個人的で一般的な要素に分解してしまう機械」
 「彼の魅力を統計学的に奪ってしまう訊問」しかもその一般的な要素から、彼を再構成することが可能。

 「なんの強制もなく国民の中心からわきあがる示威運動」
 eine ohne Zwang aus der Mitte des Volks aufsteigende Kundgebung

 「花が大地の水分と空気で滋養をとるためにはスプーンもフォークもいらないように、ラヘルには教養は少しも必要なかった」

 ディオティーマは、ラヘルを教化するために、彼女にものごとの普遍的意味を常に考えさせる。コップを割った損害は些細だが、コップは日常の義務の象徴である、というように。

 ディオティーマのアルンハイムへの愛情
 親密さの増大に対抗して「偉大な感情」を動員する。歴史的な出来事にかかわるという平行運動の偉大さは、二人にとって「彼らの魂の交通量が増すなかで身を保つためのいわば安全地帯であった。」die Verkehrsinsel in ihrem anschwellenden seelischen Verkehr

 若い人たちは「魂」という言葉を笑わずには口にすることができない。これは年配の人びとのための言葉であり、齢をとるにつれて名付けがたいものを表したくなるために、不本意ながら使う語である。

 「魂を殺しはするが、同時にそれを小型の缶詰に保存して使用に供する」
 熱く燃えた魂は、早めに鋳型の中に流しこまれてしまう。

 アルンハイム…哲学かぶれの大実業家。あらゆる専門に通じた「全人」
 「みなが喜んで彼の言葉に耳を傾けたのは、これほど多くの思想をもっている男が金までももっているということ、それが好ましかったからである。」
 Man hörte ihm gerne zu, weil es schön war, daß ein Mann, der so viele Gedanken hatte, auch Geld besaß.

 銀行支配人フィッシェルの妻。一般大衆の素朴な反ユダヤ的偏見を無視することが、教養の証であるように感じられたので、ユダヤ人と結婚した。

 知は一つの不法な情熱である。知らねばという強迫も、飲酒狂と同様に、均衡を欠いた性格を作り出す。科学者は真理を追究するのではない。真理が彼らを追い回すのだ。彼らにかかわりなく真理は真理であって、それが人間的なものかどうかは問題ではない。

 人間の生活は行為Handlungenから成り立っているのではなく、論文Abhandlungenや、非個人的なあらゆるものから成り立っている。

 「閣下は、互いに矛盾するはずの二つの思想を上手に分けておき、彼の意識の中で一度も衝突させたことがないという特殊能力をそなえていた。」
 Se. Erlaucht besaß eine außerordentliche Fähigkeit, zwei Gedanken, die einander widersprechen konnten, mit glücklicher Hand so auseinander zu halten, daß sie in seinem Bewußtsein nie zusammentrafen.

 処罰されうる、ということが人間の倫理的特性である。馬が狂った場合、手厚く保護してもらえるが、騎兵が罪を犯した場合、罰として牢獄に閉じ込められる。

 「鳥の営巣本能にも似て、ほんのわずかな方法と多様な材料で自我を作りあげる自我建設本能」
 einen Ichbautrieb, der wie der Nestbautrieb der Vögel aus vieler Art Stoff nach ein paar Verfahren sein Ich aufrichtet.

 「哲学者とは、おのれの自由になる軍隊をもたないために、世界を一つの組織体系に閉じ込めるという方法で、世界を服従させる暴君である。」

 ボーナデーアの夫は裁判官
 子供を産むのは女の仕事であり、殺すのは男の仕事である。

 モースブルッガーの事例は、ほどけている毛糸の先みたいなもので、それを引っ張り続けると、しっかり編んであった社会の織物の全体が解け始める。

 あの太った将校がまるで玉葱のように、筋の通った感情の動きも伴わずに、彼女の目から涙を流させたのである。

 その表情は、問題の由々しさだけを匂わせて、問題そのものには触れようとしない男の顔だった。

 アルンハイムが動揺から立ち直る瞬間をみたディオティーマ
 「着物を着る人の動きを見て、そのときまでその人が裸だったのに初めて気づいたときのようなショック」
 
 平行運動に寄せられた各種団体からの提案書
 「世界全体がわれわれに改善を要求しているかのようだ。半数は『…からの解放』という言葉で始まり、残り半分は『…への前進』という言葉で始まっている」

 自分のために用意されているベッドの脇で、床に寝転ぶ男のようだ

 「ひょっとするとわたしは、ほんのちっぽけな小石で、彼は見事な膨らんだガラス玉なのかもしれません。」(だから彼はわたしを恐れている。)

 上の方では、二つの顔が互いに恐るべき冷ややかさを向き合わせているのに、下の方では、二つの体が抵抗もせずにwiderstandslos互いに火と燃えながら流れ合っている

 自分を好いてくれる人を好きになること
 人の頭を狂わせる力が自分にあるという、自尊心を満足させるような体験schmeichelhafte Erfahrungが、市民的な愛に火をつける。これが市民性の範囲内で、非合理を楽しむ最良の方法である。

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