日射病賛歌

 暑さで頭がぼうっとしている。
 真夏の昼だ。太陽光の容赦なく差し込む部屋で机に向かって、ただ座って前を見ている。時計は夜の7時6分で秒針が止まっていた。
 何も考えられない。何故だろうと考えてみた。暑いのだ。部屋にはクーラーがあったが、今それを点けてはいけないような気がする。虫の知らせだ。外で蝉がやかましく鳴いているのだ。
 扇風機もあった。羽根が4枚。今これを廻したら、この羽根に蝉が何万匹と巻き込まれて息絶えてしまうに違いない。
 全身が汗になった。服の存在が不快だ。椅子を蹴飛ばして立ち上がった。目を瞑ると瞼の裏に扇風機の廻る映像。とどまることなく回転するのだ。それなのに時計は怠けている。太陽も止まって動かない。その輪郭をぎらつかせて何がしたいというのだ。目的をもたないものと闘う目的を求めた。
 服を脱いで太陽へ向けて力の限り投げた。扇風機のコンセントを引きちぎってまた投げた。太陽に届かないはずはないのだ。しかし蝉は鳴き止まなかった。頭の中には扇風機の廻る音と入れ替わりに、途切れることのない蝉の鳴き声で満たされた。頭をかかえて太陽にひれ伏しその足に接吻した。やけどした。