余裕なふり

 ここ2ヶ月の読書記録から。

わたし、男子校出身です。わたし、男子校出身です。
(2008/06/10)
椿姫 彩菜

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 中高一貫の男子校出身のニューハーフモデルさんの自伝。漫画化もされた。
 過去にうちの学校出身にも性転換した人はいたらしく、もはや身近な話になってきている気がします。
 性的同一性がゆらぐのは中高時代にはよくあること(僕もあった)で大概は一過性なのですが、どこで「病気」と線引きするかは難しい。手術許可の認定基準はなかなか厳しめ。この人の場合は、幼少時から遊び方も服の趣味も友達もみんな女の子で、ずっと違和感を抱いていたというから、ほんとうに性同一性障害、といえる。でもやっぱりこれも突き詰めれば、程度の問題なんじゃないか。どうなのかな。
 とにかく、こういう人が一万人に一人いるってことは、男女差は生物学的にじゃなくて、心で決まってることになり、体のほうを合わせるしかない。しかし、心ほど見分けのつきにくいものはない。
 この本は、子供のころの違和感、人気者になれた男子校での中高時代、自分の男の子っぽい名前や第二次性徴への嫌悪、そしてずっと続いてきた母親との仲違いでついに家出して、ニューハーフのお店でバイトして手術代を貯め、タイに行って手術を受けて帰ってくるまでを描いた話。すらすら読めますが、本人が書いてるだけあって真に迫っています。


平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学
(1996/12)
M.スコット ペック

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 そもそも心理学に善も悪もない。心理学は科学だから、善悪とは関係ないところにある。それでもあえて筆者は、「悪の心理学」を提唱する。
 悪といってもヒトラーみたいにスケールでかい悪者の話を扱うのではなく、日々の生活のまわりにいる一見普通の人々にひそむもの。「自分が傷つきたくない」「自分の罪を認めたくない」という、悪い方向への自己愛を、上品さとお世辞と虚飾で巧みに覆い隠して、罪を他人になすりつけまくる人たち。絶えず嘘をつくけれども、その嘘は裁判にかけられるようなあからさまな嘘というより、「愛しているから」とか「あの人のためを思って」とか言って、巧妙に反論できないように仕組まれている。簡単に言えば、偽善。あからさまな嘘よりもずっと悪質。
 とくに、第三章のケースは必読。筆者と患者の両親との会話のやりとりを読んでいると、体がぞっとします。と同時に、ここまでひどくなくても、似たようなやつはいるよなあ、自分もそうかもしれないなあ、と考えてしまう。
 古本屋で買ったので、色々書き込みがしてあって、前の読者がなに考えてたかを推測するのも楽しかった。キリスト教的なノリが嫌いらしく、批判的な書き込みが多かった。「(筆者は)自分は善だと思い込んでいる、うぬぼれに気がついていない」とか言って。そんなことないと思うけどな。


ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)ガリヴァ旅行記 (新潮文庫)
(1951/07)
スウィフト

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 いまさら何でガリヴァ旅行記なんて読んでんのと言われました。
 この作品、みんな小学生向けの童話みたいなやつだと思ってるんじゃないか。違います。痛烈な風刺文学です。漂着した先の架空の国の人々や社会や政治のようすや、受けたカルチャーショックを、旅人ガリヴァが記述する形式。基本的に架空の国の話ですが、日本もちょっとだけ登場します。踏絵をしないですむようにお願いする。
 小人とか巨人のところばかり有名ですが(もちろんそこも面白いけど)、真打は後半からの、空飛ぶ国と、馬の国。空飛ぶ国(ラピュタ)の住民は思索の人々で、自分の世界に入り込んでいて、人と話をするときには従者に耳を叩いてもらわないといけない。ガリヴァはそいつらとじゃ話にならないから、普通に話せる従者や女性とばかり話していた。そしたら思索者たちから軽蔑される。
 馬の国(フウイヌム)の人たちは馬みたいなのだが、悪徳から無縁の、人間よりも完成された生き物。そして醜い形の人間のような動物(ヤフー)を家畜にしている。ガリヴァはすっかりこの国に愛着をもち、ヤフーと同類扱いされないように努力する。しかし結局イギリスに帰らねばならなかった。帰国して妻と子供に会っても嫌悪しか感じず、以後はすっかり人間嫌いになって部屋にこもっている、という結末です。
 社会風刺の文学、ということになっていますが、一部はあまりにぶっ飛んでいて、風刺とかいうレベルを超えています。スウィフト自身、相当な人間嫌いのヒネクレ君だったそうです。第三篇(空飛ぶ国)で出てくるいろんな科学者たちの、例えば「意見が合わない二人を合意させるためには、片方から脳を半分ずつ切り取って交換すれば、自然と脳内で解決される」という主張とか、「ウンコを食べ物に転換させる」とか、もはや科学主義批判というよりは、ただのギャグだよね。
 小学生向けなんかじゃないです。この作品はむしろ高校生以上の人が読むのにふさわしいです。おすすめ。


イカはしゃべるし、空も飛ぶ〈新装版〉 (ブルーバックス)イカはしゃべるし、空も飛ぶ〈新装版〉 (ブルーバックス)
(2009/08/21)
奥谷 喬司

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 イカ娘は毎週二回ずつ見てます。
 第四章「イカの愛と性」がダントツで面白い。イカの交接、やばいでゲソ。